BIG WAVE LIFE→メッセージ(3)

これは幻聴ではなく、確かに誰かの歌声のようだ。
しかし何て美しい歌なのだろう。
静かで透き通り、凛としたその歌声は地球の裏側までも届くのではないか、そう感じるほどでした。
地下鉄の入り口に近づくと、曲名が分かりました。
「アメージング・グレースだ・・・」
一番好きな歌でした。
ピアノで弾きながら「いつの日か必ずアメリカへ行こう!」と誓った曲です。
何度も聞いた曲ですが、このときほど美しく感じたことはありません。
-*-*-*-*-*-*-*-*-彼はその歌声の主に会いたいと思いました。
どうせ最期だから。
自分の好きだった歌を最期の思い出にしよう。
この1年、良いことは何もなかった。
よろよろと階段を下りると、大勢の人の壁で前へ進めません。
しかもこの人だかりの山は皆息を止めているかのように、身動きひとつしませんでした。
生きる気力をなくしていた彼ですが、腰を落とし、あごを引き締め、頭と手で人を掻き分けて前へ前へと進みました。
自分の中にまだこんな力が残っていたのか、と驚くほどです。
そしてやっとの思いで一番前の列に抜け出し、顔を上げ歌声の主を見た瞬間に彼の息も止まり、周囲の皆と同じく固まってしまいました。
その(
4)へ続く
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